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第二十三話 連れ戻される

Author: 海野雫
last update Petsa ng paglalathala: 2026-02-23 19:00:34

 あれから何度も、湊の耳の奥で雄一の声がこだましている。

「湊」

 低く、冷たい声。

 それを聞くと背中が粟立ち、そのたびに周りをきょろきょろと見渡してしまう。誰もいない。誰も湊を呼んでいない。それなのに、声だけが聞こえる。

 もう、病気だな。

 自分でもそう思う。まるでなにかに取り憑かれているようだった。

 雄一のもとを出て、自由になったはずなのに、自由になれた気がしない。どこにいても、なにをしていても、雄一の気配を感じる。ずっと雄一の大きな囲いの中にいるようだった。見えない檻の中で、自由の夢を見ているだけのような気がする。

 たまに、雄一がどうしてこれほど湊に執着するのだろうか、と考えることがある。

 湊と雄一は、取り立て屋に追われていたとき、初めて会った。少なくとも、湊の記憶ではそうだ。

 けれど雄一は、以前から湊のことを知っているかのように話すことがあった。「やっと手に入れた」とか、「何年も待った」とか、そういう言葉を時々口にしていた。

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